プラスチック敷板の原料は?樹脂の種類でこんなに違う!
ゴミ袋からペットボトル、洋服にいたるまで、わたしたちの生活にはプラスチックを使ったものが欠かせません。ですが、ひとことで「プラスチック」といってもさまざまな種類があります。では、工事現場で使われるプラスチック敷板はどんなプラスチックでできているのでしょうか?プラスチック敷板はプラシキ、プラ敷板、樹脂敷板などと呼ばれることもありますが、さっそく「プラスチック敷板」について調べてみました。
樹脂製敷板とは
樹脂(プラスチック)でできた地盤養生用の板のことを樹脂製敷板といいます。プラスチック敷板、プラ敷板、プラ敷き、プラ板などと呼ばれます。仮設道路、仮設駐車場、資材置場などの用途で敷鉄板のかわりに使用されます。
樹脂製敷板のメリット
樹脂製敷板(プラスチック敷板)には①重量が軽い、②敷設が簡単、③耐水性があるといったメリットがあります。
①重量が軽い
1枚の重さが数百kgもある敷鉄板とは異なり、プラスチック敷板は1枚40kg前後のため、人の手で持つことができます。トラックで一度に運搬できる枚数が敷鉄板よりも多いため、運搬費の削減につながります。
②敷設が簡単
敷鉄板を敷設する際は重機が必要ですが、プラスチック敷板は重機なしで、人の手で敷いていきます。敷鉄板と比較すると敷設にかかる費用・手間・時間を削減できます。
③耐水性がある
地盤養生のためにコンパネが使われることもありますが、雨などで水に濡れるとしだいに腐ってしまいます。プラスチック敷板なら水にも薬品にも強いため、腐ることがありません。
ポリエチレンとは
プラスチック敷板ではポリエチレンがよく使われています。ポリエチレン(PE)とはエチレンという原料を重合(*)させたもの。構造が単純で加工しやすく大量に作りやすい。世界で最も生産量が多いプラスチックです。
*重合(じゅうごう)
連結させる化学反応のこと。エチレンという液体をつなげて重合させることで固体に変わります。
■ポリエチレンの特徴
ポリエチレンには優れた特徴がたくさんあります。
・水より軽い(ポリエチレンの比重は0.91〜0.965)
・成形、加工しやすい
・吸収性がほとんどなく、防水性が高い
・電気絶縁性が高く、電気を通さない
・耐薬品性が高く、薬剤による劣化がほとんどない
・耐油性が高く、石油タンクとしても使える
・耐候性が高く、変色、変形しにくい
■ポリエチレンの用途
使い勝手のいいポリエチレンは、いろいろな用途で使われています。
身近なところでいうと、ゴミ袋、ラップ、食品チューブ、バケツ、シャンプー容器、冷凍食品の袋など、文字通りあらゆるものに使われています。また、農業用フィルムや電線被覆、コンテナ、パイプなど産業にも欠かせないものとなっています。
敷板に使われる樹脂の種類
樹脂の中にもたくさんの種類があり、プラスチック敷板に使われる樹脂について調べてみました。
再生ポリエチレン(PE)
再生ポリエチレンとはほかの用途などの製品に成型して使用され廃棄されたポリエチレンを砕いて再利用したポリエチレンのことです。プラスチック敷板はカーボンを混ぜて真っ黒にするため、見た目は新品の材料でつくった場合とほぼ変わりませんが、再生であることから強度の均一性を担保することが難しい面があります。そのままでは硬くならないため、タルク(鉱石の一種で微粉砕したもの)などを一定量混ぜることもあります。
高密度ポリエチレン(HDPE)
ポリエチレンのなかで特殊製法を用い耐性を高めたポリエチレンのことをいいます。通常のポリエチレンに比べ、剛性、強度が高く、長期間使っても劣化や摩耗しにくいという特徴があります。
ウッドプラスチック
ウッドプラスチック(WPC)は木材(木質バイオマス)とプラスチックを組み合わせてつくられた素材で、主にフローリングや家具、屋外ではデッキやベンチなどに使われています。
ウッドプラスチックは木材にプラスチックを混ぜて木材の吸水性を弱めることで、耐久性を補っています。配合する木粉とプラスチックには廃材を利用することができるため、環境に配慮した材料と言えます。強度など、ポリエチレンとは異なる性質がありますので、プラスチック敷板の用途によりうまく使い分けができるといいですね。
バージン材と再生材の違い
樹脂には、配合の違いによる種類だけではなく、バージン材と再生材という区分けもあります。それぞれどのようなものなのでしょうか?
バージン材:
新品の素材だけを使って製造したもの。一定の性質が保たれているため安定した成形ができます。再生材と異なり、品質の均一な製品がつくれるという点が優れています。
再生材:
ほかの製品に成型して使用され廃棄された樹脂を砕いて原料に戻し、製品化したものです。
ほかの製品として使用され廃棄されるものからできているので、再生材を得られる数量は不安定なところがあります。また、得られる再生材のすべてが新たな製品として生産するのに十分な品質を保っているわけではありません。均一の品質の材料を集めることには限界があります。
再生材を使用するとどんな影響があるのでしょうか?
①熱による影響
再生材は、いったん別の製品に成型されて使用され劣化した製品を粉砕してスクラップにします。そのスクラップに熱を加えて溶かします。そしてペレットにするためにさらに熱を加えます。最後に、あたらしい製品に成形するためにまた熱を加えます。
そのため再生材は、バージン材よりも3回多く熱がかけられることになります。繰り返し超高温にさらされることで、品質が劣化する原因となります。再生した樹脂は脆くなったり、長期間の使用で変形しやすくなったり割れやすくなったりします。
こうした再生回数が、2次再生、3次再生と、多ければ多いほど劣化します。
②異物による影響
再生材は廃棄処分になった製品を砕いて原料とするため、製品の洗浄では落とせない汚れや油分が入り込んでしまう可能性があります。異物が混入することで品質の均一化を徹底することが難しくなる面があります。異物を除去する際に使用する網目のサイズを100メッシュ、120メッシュ、150メッシュと細かくしていくことで、より小さな異物を除去することはできますが、網目よりも小さな異物はどうしても混入を避けられないため、異物混入の可能性をゼロにすることはできないのです。
また、水分が入っていた場合には、樹脂が水に反応して加水分解という化学反応が起るため、分解され劣化が早まります。
②カラーによる影響
再生材は、元の製品のカラーが反映されてしまいます。元の製品にはカラーがついていることがほとんどですので、さまざまなカラーのまだら模様をわからなくするため黒いカーボンを混ぜます。プラスチック敷板のほとんどが黒いのは再生前のカラーを黒いカーボンで見えなくしていることが背景にあります。
また元の製品カラーが透明な場合でも、再生材は高熱処理を繰り返すため多少色が焼けたものになります。
高密度ポリエチレン、再生ポリエチレン、ウッドプラスチックの比較
樹脂のそれぞれの特徴により、異なった樹脂を使用した敷板には異なった強度の違いがでてきます。
強度比較
公表数値
敷板の材質 | 高密度ポリエチレン (バージン材) |
再生ポリエチレン X社 |
再生ポリエチレン Y社 |
ウッドプラスチック |
---|---|---|---|---|
曲げ弾性 JIS K7171 |
1454MPa | 10.6MPa | 20MPa | 22MPa |
引張強度 JIS K7161-2 |
28MPa | 9.8MPa | 24MPa | 不明 |
圧縮強度 JIS K7181 |
59MPa 最後まで破壊せず |
25.4MPa | 29MPa | 33MPa |
対応温度 | -30度から60度 | -15度から50度 | -15度から50度 | -15度から50度 |
※曲げ弾性は数字が大きければ大きいほど硬くて割れないことを示します。
※引張強度や圧縮強度は、横方向と縦方向への荷重にどれだけ耐えられるかを示します。
「大型車両が通る現場で使用したい」「何度も買い替えるのは手間、同じものを長く使用したい!」という方は、高密度ポリエチレンの敷板を採用されることが多いようです。